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「ベニスに死す」はなぜ名作なのか

たぶん、20年くらい前に一度観たきりで、2回目の鑑賞となった映画「ベニスに死す」。

美少年タージオにメロメロのおじさん、というイメージだった。

今回久々に観て、さらに感じたのは、

 

「惨めさ」

「醜さ」

「したたかさ」

「無様な姿」。

 

なんでこの映画が有名なんだろう。

セクシャルマイノリティ当事者の私にとっては、わりとよくある物語なんじゃないかと思うけど。

マジョリティにとって、この映画の良さって一体何なんだろうって思う。

 

この美少年タージオを演じた彼は、誰もが一目見て「美しい」と感じるのではないかと思う。

稀な美しさ。

この彼にぞっこんになる中年の男。

彼の姿が、惨めすぎて耐えられないよー。

 

あんなにタージオに嗜められているというのに、翻弄されまくるのだから、

見るに耐えない、けど、見ちゃう。

惨めすぎて、タージオを追うより、彼を追いかける哀れなおじさんを追ってしまう。

 

なんだろう、おじさん、かわいそうなんだけど、自分がおじさんの立場だったら、

と考えると、

「おいおい、そんなにあからさまに追いかけないぞ、私だったらね」

と思って、ヒヤヒヤしてしまう。

美少年のほうも、

「このおっさん、オレに惚れてんぞ!フン、何か言いたいことがあるなら話しかけてくればいいのに」

などと思ってるんじゃないかというような、思わせぶりな素振り。

 

しかし、このおじさんがもう少し若くてイケメンな音楽家だったら、BLになるんだろうけど、

歳の差が親子ほどもあると思われるので、どうしても「キモく」なってしまう。

 

あのおじさんも、タージオに話しかけるとかすれば、まだいいんだけど、

ただただ、じっと見る。

 

これがどうしてもキモいんですねー。

 

と言いつつも、私だって、憧れに相手を、ただフェンス越しに眺める、

みたいなタイプですよ、ええ、御多分に洩れず。

 

ただ、相手に気付かれでもしたら、スパッと切り上げますけどね。

 

おじさんも、最初にタージオにハッキリと見つめ返されたときに、すぐに家に帰る!とイキリ出したんだけど、手違いで帰れなくなって、意気揚々とベニスに帰ってくる。

 

素直なおじさん。

 

命を削ってまでタージオ君にぞっこんなんだから、本当に無様。

 

ただ、これが恋愛?一途な片想い?と見れば美しいのか。

 

ストーカーと言ってしまえば、なるほどそうかも。

 

とにかく、あんな姿は晒したくないなと思う。

私も、下手したらおじさんの歳に近いかもしれないし、気をつけるべし!だわ。