だいたいのことはひとりでも楽しい

一番大切にしていることは「精神衛生」です。

出産しない女たち [m]otherhood 〜書き起こし〜 3/3

|後悔|

 

ルイサ

 

私には娘がいます。18で妊娠して、19で産んだ子です。

本当は産みたくなかった。妊娠も母親になることも想定外でした。

でも、当時の彼と母に産むように言われたんです。

自分より、2人の気持ちを優先しました。

 

母には、楽しんだのなら、その結果をちゃんと受け入れなさい、と言われました。

Sexをした代償を払うようなものでしたね。

よく分からないけど、そんな感じ。

 

始めのうちは、いい母親になりたくて、全力で取り組みました。

向こう水な行いの償いをしたかったから、必死でした。

おばさんが着るような服を着て、好きなことを全部やめたんです。

外出もゲームもやめました。認めてもらうために、大人の女性のふりをしたんです。

できればこの現実を変えたかった。母親にはなりたくありませんでした。

 

パートナーから酷い扱いを受けたり、不幸せだったりしたら別れればいい。

仕事が嫌なら辞めても構わない。

でも、母親になったら、引き返すわけにはいかないんです。

 

傷跡のように、一生付いて回ります。

たくさんの不安やプレッシャーに苦しみましたが、仕方がありません。

みんなが幸せになるのは、無理なんです。

 

最初の数年間、私は100%母親でした。

でも、勉強に時間を取られるようになって、母親の役割を縮小せざるを得なくなりました。

それで私は、自分のアイデンティティを取り返したんです。

私はネット上で発言するようになりました。

感じたことを率直に表現しました。

母親であることについて疑問を投げかけると、一部の人が激しく反応しました。

ほとんど個人攻撃ばかりです。

私が娘を愛していない、いつか娘に危害を加えるに違いない、と決めつけていました。

あの人たちには分からないんです。

当事者ではないし、私と同じ経験をしたわけではないんですから。

子供は愛しているけれど、縛りつけられるのは嫌だということが、理解できないんです。

 

イラティ・フェルナンデ(ソーシャル・エデュケーター)

 

母親になるのは、この上なくロマンティックな体験で、幸福と満足に満ち溢れているかのように思われています。

でも、現実はそうではありません。

全てを投げ出してしまいたくなることもありますし、決断が正しかったのか疑問を抱くこともあります。

でも、口には出しません。タブーだからです。

 

オルナ・ドーナト(社会学者)

 

もし、人生をやり直すことができたら、子供は産まなかった、という人たちがいます。

産んだことは間違いだったと。

理由として彼女たちが挙げるのは、まず、母親になることに伴う責任の重さです。

自分の時間がなくなること、母親になる前の自分が失われることもそうです。

誰かに依存されるという人間関係が、この人たちには耐え難いことなんだと思います。

 

エリザベート・バダンテール(哲学者)

 

母親を聖母のように神格化するのは、もうやめにしたいですね。

そんな単純な話ではないんです。

子育てに本当に成功したと言える母親は、ほんのひと握りなんですから。

 

ーーー 再び、ケイトのステージ ーーー

 

人口問題の専門家S・エモットは、著書の中で熱弁しています

「2025年までに人口は100億人に達し、資源が不足する」

 

彼は この学術論文を シンプルな言葉で締めくくりました

「これはやばい」

子供を1人産むと、あなたの二酸化炭素排出量は20倍になるそうです

 

誇らしくなりましたが、検索に使ったのは希少金属満載のiPad

 

イルカに優しくないマグロも食べてる・・・これはウソです (笑)

 

 

|良心|

 

アウドレイ

 

環境に配慮している人たちは、資源リサイクルを始めとしていろんな活動をしていますが、

そういう人たちが子供を連れているのを見ると、一番にやるべきなのは子供を作らないことなのに

と言いたくなります。

現在の社会は、全くサスティナブルではありません。

今のような消費活動を続けたら、地球があと3つ必要になるとよく言われますよね。

 

自分の時間を好きなことに使ったり、仕事のために費やしたり、子供は持たないと決めたりするのは、

決して利己的なことではないと思います。

子供がいる人のことは尊重しますが、子供を作るという決断こそ、利己的ではないでしょうか。

 

究極の愛の行為だ、人生で一番大事なことだ、と言いますが、

私に言わせれば、ほらやっぱりって感じです。

人生で一番大事なこと。

それがまさにわがままなんです。そこを理解して欲しいですね。

 

ーーー 昔のモノクロテレビの放送 ーーー

 

” この国は 混み合ってきました。

合衆国の人口は過去最大になり、11秒ごとに国民が増えています ”

 

 

イラティ・フェルナンデ(ソーシャル・エデュケーター)

 

子供を作ろうとしないのは、身勝手とみなされるようです。

人口は多すぎるのに。

 

コリーヌ・マイヤー(作家)

 

みんな内心、これ以上子供は要らないと思っています。

世界の人口は100億に向かっているのですから。

でも、正直に言いますが、私にも子供が2人いるんです。

私も、自己中心的な人間の1人です。

 

イラティ・フェルナンデ(ソーシャル・エデュケーター)

 

自分の子供を持つのは、ある意味、利己的なことです。

対照的に、養子をとるのは寛大な行為です。

 

アナ・マラデス(法学博士)

 

男の子でも女の子でも、養子をもらう決断をするのは簡単なことではありません。

一言で言えば、究極の利他的行為です。

 

アウドレイ

 

私は今、公共の財団で広報の仕事をしています。

この仕事はとても気に入っています。

社会的な側面もあって、例えば大きな壁面をデザインしたり、アートフェスティバルを企画することもあります。

仕事の大部分は、社会的に排除されがちな人や、小学生、中学生のためにワークショップを企画することです。

 

35歳の時に、不妊手術を受けました。4年ちょっと経ちます。

国の医療保険で無料で受けました。卵管を塞ぐ手術です。

初めて病院へ行った時は緊張しました。

女性の不妊手術を拒否する医師もいると聞いていたので、断られるんじゃないかと心配だったんです。

子供もいませんでしたし、健康上の理由もありませんでしたから。

 

ーーー アウドレイと男性パートナーとの自宅 ーーー

 

私たちは一緒になってまだそれほど長くはありません。

彼には、割と気軽に不妊手術を受けると伝えました。

私の考えを知っていたので、ショックを受けないことは分かっていました。

病院に付き添ってくれて、手術室に入る前にこう言いました。

「これまで言わなかったけど、君の体なんだから、僕の意見は聞かなくていいんだよ」

優しい言葉だと思いました。

 

子供を産まないもう一つの理由は、母親になることが、女性を縛り付けていると分かったからです。

私にとって、不妊手術は自分に力を与える一つの方法、自分の体をコントロールする手段なんです。

 

リナ・メルアネ(作家)

 

現代の資本主義は、子供を一大産業としています。

市場には、子供が必ずしも必要としないものがあふれています。

親は、子供に物を買い与えよというプレシャーをかけられて、結果的に資本主義の餌食となっています。

 

人口を抑制すべきだと思います。

人間は、地球や他の動物にとって最悪の存在です。

子供を産む人が減っても劇的な変化はないでしょうが、多少は状況が改善するかもしれません。

余分な資源を使って、大量のゴミを出していますから。

1人でも少ない方がいいんです。

 

ーーー 再び、ケイトのステージ ーーー

 

「やってみないと分からないよ」

人はよく そう言います

 

私は馬の肉を食べたことも トランプ大統領と結婚したこともない

 

でも「やってみないと分からない」と言われても 試す気にはなれません

 

「将来 誰に面倒をみてもらうの?」と言われることもあります

 

子供に無給の介護士の役目を期待できるんですね

 

年とった私の面倒を見ようという熱意は

保守党の政府並みでしょうけど

 

「あなたなら すてきなお母さんになれるのに」というのもあります

 

無神経ですよね

子供が産めない人もいるんです

 

死期が迫った人にこう言うんでしょうか?

「あら あなたならすてきな老人になれるのに」

 

ーー ケイトの自宅 ーー

 

詩人は時に、若者向けのワークショップを開くことがあります。

私の場合、始め、子供が好きじゃないから、楽しめそうにないなと思っていました。

でも、いざやってみると、とても不思議な素晴らしい体験でした。

驚いたことに、子供たち、中でも10歳以上の子供たちとの作業がとても楽しかったんです。

 

中にはお気に入りの子もいて、教えることを楽しみました。

詩は自分を表現し、物事について深く考え、目の前に敷かれたレールの上を歩かなくてもいいんだと

気づかせてくれる、素晴らしい道具なんです。

 

ーーー 子供達とのワークショップの様子 ーーー

 

” 「自由」という言葉を考えてみて

 どんな音を聞いたら自由を思い出すかな?

私の場合は 飛行機が飛び立つ音を聞いたとき ”

 

生徒

「自由ってサルの赤ちゃんみたい」

 

一同 笑

 

ケイト

笑「いいね」

 

生徒

「空を見た時とか」

 

 

人間はこんなにも多様なのに、私たちはいつも分類されてレッテルを貼られ、

こうあるべきだとプレッシャーをかけられます。

母親になれ、というのもそのひとつです。

まるで、人生の最大の目的が子供を作ることみたいに。

 

人類や世界に貢献する方法は、たくさんあると思います。

子供を産むことが、一番いいとは限りません。

一部の人にとってはそうかもしれませんが、私にとっては違います。

 

 

ナレーション

社会はなぜ、子供を持とうとしない私たちを、これほどまでに恐れているんでしょう。

 

 

・女性の声

私は、母性を否定したり、母親になることに反対するプロパガンダ運動を行なっているわけではありません。

出産に反対しているわけではないんです。

もっと多くの女性が、自分の人生を生きられるようにと訴えたいのです。

 

自分の体、自分の考え、感情、決断、空想、夢。

 

その全てを自分のものにできるように。

女性たちにどうすべきか指示するつもりはありません。

 

・女性の声

問題は、理由もわからないのに子供を産む必要があるのか、ということです。

 

子供を産むかどうか、それには、強い外圧が無意識に働きます。

本当に自由な選択の結果だったかどうか、確信するのは難しいですね。

 

・女性の声

社会は、人の手によって作られたものなので、他のかたちにすることも可能です。

全く別の世界を目指すこともできます。

 

・女性の声

子供を作る前に、自分たちがどんな社会を望むのか、なぜ子供が欲しいのかを考えるべきなんです。

出産ストライキもひとつの方法です。

 

マリベル

女性は生殖機能を持っていますが、それは必ずしも必要なものではありません。

私たちは、女性である前に、まず人間なんです。

私は何も後悔していません。

 

サラ・フィッシャー

写真家の仕事が好きです。子供のためにはなんでもします。

でも、自分の夢を実現できなければ幸福とは言えません。

母親が幸せでなければ、子供も幸せになれないと思います。

 

ルイサ

人は、私の物語を知りません。

外側だけで、私という人間を判断します。

デザインしたり、物を作ったりすることで救われるような気がしています。

私には、本当に好きなものがあるんです。

 

・女性の声

子供が欲しい女性は産むべきです。

でも、望んでいない女性が、なぜ子供を産まなければいけないのでしょうか。